松原剣道・剣友会


剣道のお話

剣道のお話

道場について
名誉師範 友川 紘一

剣道の道場とは、道を修める神聖なる場所であり、その中央には必ず神棚が設けられている。この神のもとで正々堂々と、お互いの技の向上と心を錬り合う場所なのであります。

そもそも道場とは、元来仏道を納め、仏教を説くところで、寺院の別名であります。僧肇(そうじょう)(注1)の註語に「閑宴修道の処これを道場という」といっている。道場は剣道修行上の神聖なる道を修める霊場であって、神社仏閣の祭壇と同じである。また、道場という文字は、維摩経菩薩品(ゆいまぎょうぼさつほん)に「直心是道場」とあるのが最古のものとされており、仏儒の修行する場、すなわち法堂、講堂、僧堂の総称であったようです。

どこの道場にも必ず神棚が設けられており、神棚の中央に天照皇大神を初めとして、香取明神(経津主命(ふつぬしのみこと))、鹿島明神(武甕槌命(たけみかづちのみこと)、流祖の武神などを祭祀してあります。

道場の玄関に「脚下照顧(注2)」、「道場訓」などが掲げているのは、修行に臨む者の心構えなのであります。道場においては、道場の出入り、稽古の前後にも必ず、神前に拝礼を行うなど厳格なる礼儀作法のもと神に恥じない公明正大な精神で修行するものであり、剣道技術の向上とあわせて人間修行の場なのであることを知っておかなければならないのであります。 体育館で実施される稽古、剣道大会、審査会、剣道講習会も同様の心持ちであってほしいのであります。

宮本武蔵の「独行道」には、「仏神は貴し、神仏をたのまず」と教えております。道場は、深い精神的意義を有していることを思い、真心と厳格さをもって臨みましょう。

古歌

「道場に入るべき時は身をただし 心の鏡曇りなきよう」

「身と心技をきたえて良き人となす 道の場ぞおろそかにするな」

(注1)[374~414]中国東晋の僧。長安の人。
(注2)禅家で、足もとに気をつけよの意。自己反省、または日常生活の直視を促す語。