松原剣道・剣友会


団員の作文

団員の作文

剣道に感謝
― 小学6年 猪澤 空 ―(平成27年度全日本剣道道場連盟主催 作文体験発表)
埼玉県大会 敢闘賞

僕が所属する松原剣道は創立42年が過ぎました。僕はその内の八年を松原剣道で過ごしています。五歳上の兄と、楽しく稽古に通っていた二年生の時、道場から電車で一時間半かかる所に引っ越しをしました。学校も転校し、不安でした。「松原剣道で剣道を続けたい」僕はこれだけはゆずらず、これまでにたくさんの人にたくさん助けていただきました。先生の家に試合や出稽古の前日に泊めていただいたり、道場の仲間の家にもお世話になる事があります。友達のお父さんやお母さんが送り迎えをして下さったり、僕が自宅につくまで心配をして下さる方もたくさんいます。

引っ越しをしたころは松原剣道を辞めたくない気持ちだけでいましたが、こんな風に通っている中、だんだんと家族や色々な人に迷惑をかけている事や、学校から帰ってきてから電車に乗る事、稽古の次の日朝起きるのが辛いこと、皆と同じ稽古量ができない事、自宅近くの道場に時々出稽古に行きますが「そんな遠くに行かないで、こっちに来いよ。」と言ってくれる友達もいて、5年生の終わりのころには道場を移ることを考えていました。近くの道場に移ればその分稽古ができて強くなれる、とも思いました。

なんとなく気持ちもすっきりせず、試合でも思ったようにいかず、皆がだんだん強くなるのに、僕はあまり成長していないようでイライラして母に八つ当たりしたりしました。もうすぐ六年になるころ、先生方から「次の主将はお前で行くぞ。」と言われました。稽古に行けない日や遅刻も多いのに、そんなお話があり、びっくりしました。母は「主将は自分の事だけでなく、責任があるのよ。」と言いました。きっと、今まで以上に負担が大きいのではないかと母は心配したのだと思います。だけど、これまで僕がお世話になった主将の先輩方はとても強くて優しくてかっこよくてあこがれていました。僕は「次の主将としてがんばろう。先輩のようにはできなくても、お世話になった先生方や、あこがれた先輩や僕が小さかったころと同じように小さい体で一生懸命市内を振る後輩に主将と認めてもらえるようにがんばろう」と思いました。そう決めたら、また前を向けた気がしました。師範の南先生は松原剣道40周年のパーティーで、「松原剣道は皆さんの心のふるさとです。」とおっしゃっていました。今、僕ががんばる事ができるのは、先輩のひざの上で食事をしたことや、遊んでくれたこと、お風呂で体を洗ってくれたり、重い荷物を代わりに持ってくれたり、疲れるとジュースをくれたり、試合に勝った時は自分のことのように喜んでくれた思い出があるからです。もっと大きくなれ。強くなれ。と見守ってくれる先生方や先輩や大人がいる。僕にできない事や気がつかないことを一緒に協力してがんばれる仲間がいる。

今、小さかったころを思い出すように、大人になったら今の自分をどんな風に思い出すのだろう。全国大会に出れなかった事や電車で酔っぱらいに声をかけられた事、なかなか勝てないライバルにまた負けた事、ずっと松原剣道にいられた事を。

僕にはこれからどんな思い出ができていくのかもすごく楽しみです。チャレンジしたい事も、不安もたくさんあります。でも剣道があればいろんな事にがんばれるし、仲間もどんどん増えていきます。つらくなったら心のふるさとを思えばいいのだと思います。僕が過ごした八年間と多分これからも色々な思い出ができる剣道に、たくさんの「ありがとう」を言いたいです。