松原剣道・剣友会


松剣物語

松剣物語

2.ホームベース

もう20年以上も前のことです.あるお母さんが、私のところにきて、嬉しそうにこう言ったのです。「うちの息子の書いた作文が先日の給食の時間に校内放送で学校中の皆に紹介されたのですよ。」「それはすばらしいことですね、どんな作文だったのですか」と私が聞くと、「「一番尊敬する人」と言う題で、南先生のことを書いたのです」とのこと、私が思わずせき込んで「して、内容は?」お母さんは恥ずかしそうに少しためらったあとで、「私の剣道の先生は、ホームベースのような顔をしているし、怒るとすごく怖いけど、とても優しいいい先生です。僕は先生が大好きです、て・・・」「あのー、それを校内放送で読んだのですか」「はい」「・・・」。

私はとても嬉しかったのですが、反面子供がつけた私のあだ名が全校の生徒に放送で紹介されてしまったのです。そこで早速本人をつかまえて「おい先生のことホームベースとは何事だ、自分だって短足のくせをして」と私が言うと、私の顔をちょと見た後で、私の手を擦り抜け走りながら「ホームベース!」と叫ぶのです。「こらまて、短足!」「ホームベース!」「短足!」・・・・・

その子はとても剣道に熱心だったのに、中学を卒業すると稽古に来なくなりました。それから10年もしたある日、お母さんと偶然街で会いました.「息子は剣道のお陰でとてもいい子に育ちました」と言って次のような話をしてくれたのです。

「息子にも彼女ができて、彼女の家に遊びに行っているときに、彼女のお父さんが帰って来られて偶然廊下で会ったので、息子はその場に正座をしてお父さんに挨拶をしたのだそうです、すっかり向うの両親に感心されて、電話をかけてこられて、大変よい躾をされていると誉めて頂きました.これも小さい頃の剣道のお陰です。有難うございます」「・・・・」

その後二人がどうなったかは聞いていません。でも想像ができますね。「あの短足がいよいよ嫁さんか!!」私の独り言です。