松原剣道・剣友会


団員の作文

団員の作文

強い心
― 小学6年 西田 ひよ凛 ―(平成28年度全日本剣道道場連盟主催 作文体験発表)
小学生の部 埼玉県第一位

「ヤァーーッ、メーーンッ」私が剣道で一番好きな決まり手は「面」だ。剣道の基本であり最強の技は「面」だと思っている。ただ漠然と打つのではなく、気合いで勝ち、相手の中心を取った上での一本は、本当に気持ちが良い。

私は剣道が好きだ。学校で嫌なことがあっても、道場へ行き、大きな声で「メーン」と気合いを出していると何故だかスッキリしてしまう。

私が4歳の夏、初めて剣道の稽古を見た。そこは、父の故郷である種子島で、いとこ達が重たそうな防具をつけて汗を流している姿が印象的だった。種子島は、海に囲まれた小さな島なのでとても湿気が多く、じっとしているだけでも暑いのだが、扇風機もない体育館で、「メーンッ」と大きな声を出し、打ち込む姿がとても格好良く見えた。

あれから8年、今年初めて剣道具を持って種子島へ帰省した。あの頃と環境は変わりなくとても暑い、蒸し風呂のような体育館だったが、いとこ達と剣道できる喜びでワクワクしていた。

そして何よりも、種子島のばあちゃんに剣道をしている姿を見せられて良かった。遠いので、なかなか会えず電話で話す事が多いが、いつも電話ごしに「ひよりの声を聞くと元気が出る」と種子島弁で言ってくれた。私の剣道姿を見たばあちゃんは「声が大きかなー。気持ちんよか声じゃー」と、やっぱりほめてくれた。大きな声が取り柄なのでとても嬉しかった。

私の所属している団では、年度始まりの四月に新しい主将の発表がある。主将発表の日、師範の先生が告げた名前は、「主将、西田ひより」と私の名前だった。まさか私が主将になるとは思っていなかったので、すごく驚いた。それは、私の知っている歴代の主将達は、男性である事もそうだが、何よりも剣道がすごく強かった。私は剣道はそれほど強くなく、体も小さくてパワーもない。そんな私がなぜ主将になれたのか不思議で仕方なかった。そんな慌てた気持ちのまま、毎日焦ってばかりいた。そんな中、ある事がきっかけで私の考えが少しずつ変わってきた。

それは、今年起きた熊本地震で被災した方々に、団で何かできないかと話し合いを始めた時の事だ。主将として何とかまとめあげなくてはいけないと、いつものように焦ってばかりいたら、同じ六年生の仲間達が「一緒に考えよう。一緒にがんばろう。」と声をかけてきてくれた。小さな幼稚園の子から低学年、高学年と色々な意見をまとめるのは、それはそれは大変な事で、仲間が協力してくれる事はとても有り難く、見に染みた。誰かに任せるのではなく、協力して団結してやる事の大切さをとても感じた出来事だった。と、同時に、主将になってから、余裕がなく剣道を楽しむ事をすっかり忘れていた事にも気がついた。

私がみんなに負けないと思う事が二つある。一つは、剣道を知ってから「剣道が好き」という気持ちが変わっていない事。もう一つは、ばあちゃんもほめてくれた「声が大きい事」だ。

私はどこでも挨拶だけは大きな声でするように心がけている。小さな事でも継続する事だけは頑張ろうと心に決めている。「継続は力なり」という言葉を信じている。今でもなぜ私が主将に選ばれたのか答えは出ていないけれど、少しずつ分かってきたのは、剣道が強いだけではなく、心も強くないとダメな事。みんなが嫌がるような事を自ら進んで取り組む事で、そういう姿を見て後輩達はついて来てくれるのではないかと感じる。これからも、小さな継続を忘れずにいこう。いつでも一生懸命声を出していこう。力強く一本一本竹刀をふろう。

少しでも剣道も心も「強く」なれるように・・・。